「お前、勘違いしてね?
俺、回覧板渡しに来ただけなんですけどー」
えっ…回覧板…!?
てっきり私に会いに来たのかと…!
すごく恥ずかしいんだけど!
そんなのもっと早く言ってよ!ややこしい!
「そ、それならもっと早く言ってくれないかな?」
そう言いながら扉を少しだけ開けて腕を外に伸ばす。
だけど、サキはなかなか回覧板を私に渡してくれない。
「……顔が見てぇな」
「えっ?」
「俺、ナツの顔が見たい」
な、何言ってるの?
そんなに迷いなく言われると
嘘でも戸惑ってしまうよ。
すると、サキは戸をガラッと開けて、
私の手を掴むと、外へ引っ張った。
「な、何するの…!?」
「何って顔が見たいって言ったじゃん」
そういって私に回覧板を「はい」と渡す。
視線を合わせないように受け取って家の中に入ろうとしたら、サキは再び私の腕を掴んで引き止めた。