【夏葵side】


「なっちゃん。よく来てくれたね。
ちょっと見ない間にこんなべっぴんさんになったね」


嬉しそうに優しくはにかみながらおばあちゃんが私の体をぎゅっと力強く抱きしめた。


三年ぶりに訪れたこの田舎町は昔と変わらず、自然豊かな場所で都会にある重い空気なんてどこにもなく、息を吸って吐けば少し心が軽くなった気がした。


「みんな、なっちゃんの帰りを待ってたんだよ」


そう言うおばあちゃんの言葉を聞いて都会で疲れた私の心を気遣ってそっと癒して優しく寄り添ってくれているような、そんな気持ちになった。


たぶんそれは気を使って言ってくれただけであって、本当かどうかなのかは三年もこの街から離れてしまった私にはわからない。


「…ありがとう」


だけど、そんなことを思ってしまっていることに気づかれたくないから私は何も無いようなフリをしながらお礼を口にして笑った。


「なっちゃんがこっちに戻ってきてくれて、ばあちゃんすごく嬉しいよ」


おばあちゃんの温もりはとても優しくて私の頭を撫でてくれている年齢を感じさせるシワシワの手も昔と何も変わっていなかった。


あぁ、やっと…やっと帰ってこれたんだ。


君がいる街に。