「何でこんなことになっちゃったのかなあ」

 春三月。新しい希望の未来への期待と不安に胸揺れる旅立ちの時期。

 でも、希望はなく、ただ不安だけを抱きしめて、卒業だけを強いられる人もなかにはいるかもしれない。いまの私、天(てん)河(かわ)彩(あや)夢(め)みたいに。

「これからどうしたらいいっていうの……?」

 聞く人とていない愚痴を呟く。目の前がじんわりと歪むのは、早々と飛来した花粉のせいだけではない。長めのボブが風に弄ばれた。色白できめ細かな肌が密かな自慢だったけど、このところは少し荒れている。

 つい一週間前のことだ。

 社内で大きなプロジェクトが頓挫したという噂が流れた。
 その手の情報にあまり詳しくない私にまで聞こえてくるのだから、大変なんだろうなと思っていたら、思わぬところでとばっちりが来た。
プロジェクトの責任を誰かが取らなければいけないことになり、私の上司がクビになった。
 そこから玉突きで組織の再編となり、結論的には何十人かがリストラされた。
 その中に私も含まれてしまったのだ。

 信じられなかった。
 私より仕事ができない(と思っていた)後輩が生き残ったのに。

 でも、決められてしまったことは仕方がない――。

 とりあえず受け止めるための時間が欲しくて、そして話を聞いて欲しくて彼氏と食事に行ったら、別れ話を切り出された。
 嘘でしょ……。

 大学時代に、向こうから告白されて三年付き合っていた彼氏なのに、お母さんにも紹介したのに、別れ話はたったの五分だった。

 会社の後輩の女の子のことが好きになってしまったとか何とか言っていた。

 ショックで彼氏の話はあまり耳に入らなかったけれど、最後まで泣くまいとがんばったことだけは覚えている。かっこいい女で別れたかったのだ。

 本当は、嫌なことが重なってもどうすることもできない性格なのに。そんな自分も嫌だけど、それもどうしたらいいのか分からないだけなのに……。

 かくして私は、穏やかな日の光を受けながら、行き場を失ってしまったのだった。