「ここらやろ?…」

地図を見ながら蜘蔬は言った。
蜘蔬たちは王都から2日かけて華龍都市に来た。

「はい。この辺りのはずです。
華龍都市東、才華地区…そして目撃多数あったのがこの時計塔」

目の前にはここら辺で1番高い時計塔であり、人気のない場所であった。

裏で何かをしようと思えばここを使いそうなものだ。

「…上…行ってみる?」

水無月は時計のある場所を指した。
ここら一帯を見渡せるだろうと考え上に登ることにした。

「…どうだった?」
「いや…こっちも空振りです。標的はもういないでしょう。」

時計塔の内部には昼の12時と午後6時に鳴る鐘がある。

その鐘の下に空間があり小さな小窓もありちょっとした展望台のようだ。

その空間に人がいた。
3人は密かに忍び寄り話に耳を傾ける。

「そうね…だとしたら西にいる可能性があるわね…」
「そうですね……ところで何か用ですか?」

会話をしていたのは女性と男性の2人。
その男性が蜘蔬たちに気づいていたようで振り返ってきた。

建物で見えないはずなのにこちらを見ていた。
目線は1つもズレていない。
真っ直ぐに蜘蔬の目を見ていた。

「…気づいとったんやな…」

勘弁して蜘蔬たちは大人しく姿を現した。
だが、体制は対戦モードのままだった。

「…あら、光国軍特殊部隊所属の子じゃない」

女性はニコニコと蜘蔬たちの所属を1発であててきた。

それにさらに警戒するのは当たり前だろう。

「知ってるのですか?」
「ええ、だいぶ前にね。この子たちの前で標的245を殺したから」

夜であるため男と女の顔は見えないが声と言葉に蜘蔬たちは何かが引っかかったようで頭に?を浮かべていた。

「あっそれと秋染の子供を助けた時にも協力してもらったわ」

そこでようやく分かった。あの時のグリムズの子供だ。

「もしかして円…?」

水無月はポツリと呟いた。
とうてい聞き取れるものではなかったが女は そうよ と反応した。

「初めまして…ではないけど
私はサーイン 45 円です。えん じゃなくて まどか よ。」

円はふふっと笑う。

あの時と同じ飴色の長い髪を二つくくりにしており、森林のような緑色の瞳をしている。

人を殺した者とは思えないほんわかとした表情の円に蜘蔬たちは戸惑う。

「それで、私たちに何か用かしら?」

円は殺気も何も出ていないが身構えてしまう蜘蔬たちは恐る恐る言った。

「この辺りでグリムズが出るっちゅう話が出てん。」
「それを確かめるために来ました。」

蜘蔬とレイリは嘘は言わず本当のことを言った。
なぜだか、この2人には嘘をついても見抜かれると思ったからだ。

「…そう。それで本当の目的は?」

だが、それ以上に見抜かれていたようだ。
円と男は目を細めた。