放課後、私は日直の仕事があり1人残っていた。香穂には先に帰ってもらっている。
「あ、金井じゃん」
すると、教室の扉が開き委員長の坂木君が入ってきた。
「なんで残ってるの?」
二人きりの空間に、いつもの落ち着いた口調の坂木君の声が響き渡る。
「日直だったから、坂木君は?」
「生徒会企画の仕事。今終わったとこで」
「そうなんだ、お疲れ様」
ここで会話が終わり、二人の間に沈黙が流れる。
眩しい夕日が教室の中に差し込んできたこの雰囲気に、気まずさも感じたきた。
「あの、さ」
沈黙を破ったのは坂木君。
「好きな人…いる?」
話を切り出したと思えば、なんでいきなりその質問?
いきなりすぎる坂木君の質問に、私の頭は少し混乱する。
「え…別にいない、けど」
私は坂木君の顔が見れず、下を向いて日直の日誌を書きながらそう答えた。
「そうなんだ。」
「…うん」
それからまた沈黙が続く。
どうして急に…
すると坂木君は私に少し近づき、なにか言葉を詰まらせる。
「あのさ、」
「…な、なに?」
「………ごめん、やっぱなんでもない!俺帰るから、じゃあな」
坂木君はそう言うと走って教室を出て行った。
なんだったんだろう今の…
今日の坂木君なんか変だったなぁ。
疑問に思ったが、私は気にするのをやめて黙々と日直の仕事を片付けた。