意識を失っている間にどうやら私は、目の前のムカつくくらい、本当に腹が立つほどの、こんな状況でさえなかったら見惚れていたような――美麗な『鬼』に助けられてしまったらしい。
 

私は……ついさっきまで、死にかけていた。いや、正しくは殺されかけていた。……ようだ。


「てか叫ぶな! ……ほら」
 

また不審者が叫ぶ。
 

ぐらりと視界が廻って、座っていても倒れてしまった。


……美形不審者の腕に抱きとめられてしまう。不審者はため息を吐く。


「ただでさえ血ぃねえんだから、無駄に使うな」


「……うぅ」
 

不審者は不審者のくせに、心配するように言ってくれるけど、私は悔しくて悪態をつく。
 

こんな間抜け姿を見せる醜態が悔しい。
 

……心配されるような口調をされると、困る。どうしていいのかわからない。
 

言動は思いっきりヤバい人なのに、助けられてるみたいに思えちゃうから。


「寒いのは我慢しろよ」
 

言って、服の背中をめくりあげられた。