「行きたい! 私も一緒にモルセンヌに連れて行って!」

「さっきも言ったが、話し合いの場にリリアは連れて行けない」

「それが終わるまで大人しく宿屋で待ってる! ほんの一時だけで良いの。私もこの目で街を見てみたい!」


思いを必死にぶつけてみても、セドマが色よい返事をくれないことにもどかしさが募っていく。


「お母さんが好きだった街なら、なおさら見てみたいの!」


半分涙声になりながら訴えかけるリリアの声に堪えきれなくなったのか、セドマは自分の足元へと視線を落としてしまった。

だんまりを決め込まれてしまったことで、切なさから苛立ちへと感情が一気に移り変わっていく。


「お父さんのバカ!」


リリアは力の限り叫ぶと、アレグロの呼びかけも振り切る勢いで、家を飛び出したのだった。