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期末テストまで残り3日。
テストで結果を出すことを条件に、親から臨時のお小遣いをもらえることになったため、とうとう本気を出すことにした。
光くんに東京行きを連絡すると『本当にうれしい。ありがと』と喜ばれた。
「それって、わたしがライブに来るから? それとも久々に会えるから?」
そう尋ねると、彼は嬉しそうに『どっちも』と答えた。
ツイッターを立ち上げ、光くんのバンドアカウントを開く。
ライブスケジュールのツイートを見つけた。
8月以降も、下北沢やら渋谷やら大都会のどこかの街で、3~4本ずつライブをするらしい。大阪や名古屋にも行くらしい。
『どこかで絶対行くー^^』『光くん頑張れ』『大学にも来いよ!』
リプライもたくさんついていて、『おいで!新曲やるよ!』『ありがとー』『おいっす』などと1人1人に返事をしている。
彼が地元にいた頃は、ネットの世界はあってもそれは日常の延長線上で。
すぐ噂は届くし、すぐ彼に会えるし、いつもつながっている気がした。
今では、画面上で情報は得られるものの、彼自身の姿が全然見えない。
ぼとりとテーブルにスマホが落下した。
「やっぱ東京は遠い! 別世界! 異次元!」
そう叫び、頭をかかえていると、
「わっ。びっくりした。さっきから携帯ばっか見てるけど、まずは勉強という名の現実と戦いなよ」
と、一緒に勉強していたアユからツッコミが入った。
仕方なく、わたしもスマホを裏返し、テスト勉強をスタート。