…自分にしか作れない味?
目から鱗が落ちたような気分だった。
…何故、自分は完全なものを求めていた?
そして気付いた。
自分はもしかしたら、ずっとこんな風に言って欲しかったのかもしれない、と。
自分では完璧完全を求める一方で、誰かに、完全でなくても「お前らしい」とか「お前にしかできない」とか、そんな言葉を欲していたのではないだろうか。
そう思った久松は、心がスッとした気がした。
「ありがとう」
自然と口に出ていた。
美弥に川に突き落とされて良かった、というのは、彼女は皮肉か何かだと思ったようだが、割と本気だった。
改めて美弥を見る。
真っ直ぐな彼女は、とても眩しく見えた。
そして久松はその眩しさに、強い憧れを感じたのだった。
胸の辺りが、ポカポカと熱いくらいに温かかったのは、きっと出されたお茶のせいだけではない。