「まあ、あなたに返してって言わなくてもゆづくんは必ず唯乃のところに戻ってくるから」


そう言って、わたしの前から立ち去っていった。


残されたわたしは心に大きな穴を開けられたくらいに衝撃を受けて、

頭の中ではいろんなことが巡っているのに、それらをすべて整理することができず、完全に真っ白に近い状態。


だけど、これだけはわかる。


きっと唯乃さんが言っていたように…優しくて、律儀な天ヶ瀬くんは唯乃さんの元に行ってしまうだろう。


現に、今もう2人はそれなりの距離にいると思うから。


それに……あんな傷を見せられたら何も言えない……。


刻一刻と……天ヶ瀬くんから離れる時は迫ってきていた……。