「え?」


微笑んだ唇から放たれた明希ちゃんの言葉をすぐには咀嚼できず、頭の中で反芻する。

偽、カレ……?


「俺が彼氏ってことになれば、さっきの子たちだって簡単にはヒロに手を出してこないだろし」


すらすらと言葉を続ける明希ちゃんを、私はただ見つめることしかできなくて。


「それに、大くん。
ヒロが、自分以外の男になったって知ったら、自分の想いに気づくかもしれないじゃん。
俺のことを訊かれたら、俺から一方的に付き合うことを強制されたって答えればいいし」


「……っ」


「俺を利用してよ、ヒロ」


まっすぐに私の目を覗き込む明希ちゃんの眼差しは、疑う余地もないほどに真剣で。


「偽物の彼氏。いい案だと思わない?」


どくん、と心臓が揺れた。


その瞬間、お昼に見た、写真に写っている大の笑顔が頭をよぎった。


優しい明希ちゃん。

王子様みたいな明希ちゃん。

出会ったばかりなのに、たくさん笑顔をくれた明希ちゃん。


……こんなにも優しいあなたを、利用してもいいですか?


私は目を伏せ、そしてこくりと頷いた。