「あ、でも………」
そして、須藤くんは付け加えるようにこう言った。
「これからは、わからないけど。」
………これからは、わからない?
それって2人が取り合いをする可能性もなきにしもあらずってこと……?
けど須藤くんって女遊びやめたはずじゃ………?
頭にクエスチョンマークがたくさん浮かぶ私が、きっとひどい顔をしていたのだろう。
私を見て須藤くんが笑い出した。
は、恥ずかしい……!
「………小野田さん。」
「は、はい……?」
優しく笑う須藤くんが、私を視界にとらえる。
「もっと、近づいていいんだよ?
小野田さんの前なら、自分でいられる気がする。」
「………え……?」
その、近づいていいとはどういう意味だろうか。
自分でいられるっていうのは………
「今の、須藤くんは本当の須藤くんなの?」
気になったから聞いてみる。
そしたら須藤くんは、また優しく微笑みながら
「どうだろうね。」
とだけ言って濁し、それ以上答えてはくれなかった。
なんか、ずるいなぁ。
今のじゃすっきりしない。
近づいてもいい、っていうのはもっと須藤くんに深入りしていいってこと?
だけど須藤くんや上原には、むやみやたらに踏み込んではいけない気がする。
だから須藤くんの意図がわからない。
なんて思い、もやもやした感情を持ちながら
私は須藤くんと並んで歩き、駅へと向かっていた。