大切にしたいって思ってた…

頭ではちゃんとわかっていた…。

でも…

今、私の心の中にいるのは…

この気持ちを…

ただ、大切に思いたかった。

だからもう…

元の私には戻りたくない…。

「……勝平…ごめんなさい。」

「紗和…?」

「…勝平とは結婚できない。」

「え、何…言って…る?」

「…私の事…許さなくていい…

…恨んでも構わない…。」

ガタン…

そう言ってすぐに…

私は、床に散らばった洋服をかき集めた。

「お…おいっ、紗和…っっ!」

勝平の言葉を無視して、ブラウスと

スラックスを震える手で

一心不乱に着る。

「…紗和…聞いてるのかっ?!」

勝平が私の方に近づいてくる。

その瞬間…

私は彼のジャケットを握りしめ

玄関の扉を開けて走り出していた。

「……紗和っっ!!」

私の後ろから勝平の叫び声が

聞こえてきたけれど私は走り続けた。

どこに行けばいいのかなんて

全然わからないけど…。

わからないけど…今の自分に…

ただ、正直でいたかった。