昇降口に続く廊下は生徒たちの声で騒がしく、さっきの出来事は嘘のように思えた。 ふたり別々に傘を差して、並んで歩く。 家に着くまで他愛もない話をしたはずだけど、ぼうっと甘い感覚だけが体を支配していて、内容なんて、ほとんど覚えていない。 「明日は三成が送るね」 そう言って去っていく背中を、あたしはただぼんやりと見つめていた。