もともと一年生の頃からクールで無口な王子様なんて騒がれていたから私も黒瀬のことは知っていた。


が、しかし、



こんなに悪態をついてくるような、性悪な人だとは思ってなかった。



さっきみたいに私のことを見るなり邪魔だと言ったり、何かと絡んできてバカにしてくる。


そして今もなお黒瀬と私の席は隣同士なのだ。一回席替えをしたもののまた隣同士になってしまって、結局ずっと黒瀬の隣である。



「おい、」


数学の時間。


始まった授業を聞こうと机の上に置いていた教科書を開いた時、右隣の黒瀬の声がした。



「おい、お前聞こえてるんだろ」



「…何?」


めんどくさいし、無視してやろうかと思ったけど、そんなことをするとあとで何されるか分からないし渋々返事をした。


「俺、教科書忘れたからお前の寄越せ。」



「……よ、寄越せってどんだけ俺様なの?!もっと『ちょっと見せて貰ってもいい?』とかあるでしょ。」


ほんと、どう考えても人に貸してもらう人の態度じゃないでしょ!ありえない。