ええと…確か、この辺なんだけど…。

私は、生徒名簿から

新井くんの住所を書き写した

紙を見ながら駅からの道を歩いた。

「◯△町…5丁目…高村荘…

ええと…ここ、5丁目だよね、番地は…

87-9…えっと、ここを右かな…。」

しばらく、道なりに進んでいくと

一軒の古そうなアパートが見えてきた。

「…ここじゃない?」

古びた看板には、高村荘と書いてある。

「…やっと、見つけたぁ…。

ええと…201号室か…。」

少し軋む階段を上がり

部屋の前で、少し深呼吸する。

新井くん、私は、白川南高校の者です。

あなたの担任の奥平です。

「よしっ!」

頭の中でシミュレーションをしてから

呼び鈴を鳴らした。

ピンポーン

「はーっいっ!」

中から女の人らしき声が聞こえる。

あっ、お母さん?

それにしては…少し幼い声の気がする。

ガチャ

「あっ、こんばんは…。」

「こんばんは!誰ですか?」

えっ、あなたこそ誰ですか?

そこには、小学生くらいの

可愛い女の子が

目をパチクリさせて私を見つめていた。