事の始まりは 1ヶ月ほど前にまで遡る。

私の彼氏、透哉は "獅龍" という暴走族の総長を務めている。

私は獅龍の姫、というもので。
透哉からは "総長の彼女のこと" と説明されている。

その姫がもう1人現れた。

"安条静香" 。
聞いた話によると、彼女は相当な苦労人らしい。

家庭環境があまり良くない、とか。

絶望の淵にいた彼女に 獅龍の幹部メンバーが手を差し伸べた。

そこまでは、分かる。
私の時も同じような状況だった。

『獅龍に入れてやりてぇけど、もう姫は居るし……』

彼女を救ったメンバーは頭を抱えていた。

『姫が1人じゃないといけない、なんて規則はないはずだ。』

透哉はそう言った。