「行こう、美紗」
「う、うんっ……」
顔を上げると、もうそこに久我くんはいなかった。
振り返ると、再び走り出した久我くんの背中が見えて……あたしはそのまま蒼くんと肩を並べて学校を出た。
駅まででいいって言ったのに、蒼くんは、ちゃんと家の前まで送ってくれた。
そして、「遥輝とも話したいから」って、久しぶりにうちへもあがって行った。
お母さんはすごく喜んじゃって、「夕飯を食べて行って」なんて引き留めて。
息子を亡くしたお母さんにしてみれば、蒼くんは第二の息子みたいな気がするのかもしれないな……。
そんなお母さんの気持ちを汲んで、遅くまで話し相手をしてくれた蒼くん。
お母さんもうれしかっただろうけど、あたしもうれしかった。