ナカシマーーというのが誰のことなのか、分からないけれど。



「送ってくれなくて大丈夫です。 あたしの家、ほんとにすぐ近くで1キロもないくらいで……」

「送るよ。怖い思いさせたのに、また何かあったら責任が取れない」

「………」

「相沢さん本当にごめん、怖かったね」


瞳が不安定に揺れる。
……どこか悲しげに。

さっきの冷たい彼とは別人みたい。



「ほんと、全然、大丈夫だから」

「でも泣いてたでしょ」

「……本多くんが来てくれたから、その、触られただけで、済んだので……」


触られたことは思い出すだけで鳥肌が立つくらい気持ち悪い。

それでも、犯されるっていう最悪のケースを想像していたあたしにとっては、これだけで済んだのは本当に幸いだった。