男が地面に腰をついたまま後ずさり。
本多くんはそのたびに一歩ずつ、静かに距離を詰めていく。


「ちなみにお前以外の3人は、どうにか歩ける程度にして帰してあげたよ」

「……」

「薄情なやつらだね。仲間を置いて逃げるなんて」



体育館の照明が落ちた。
光が無くなって、見えていた世界が一時真っ黒になる。

目は徐々に闇に慣れて、月明かりが本多くんの姿を再び映し出した。


哀れむような表情はすぐに消えて、口元は固く結ばれる。


「マジで悪かった。許してくれよ、……な?」

「謝罪の言葉なら、この子に言うべきでしょ?」


本多くんがポケットに両手をかけて、気だるげに脚を振り上げた。


「まあ、その前に」


……と、小さく微笑んで。


「その口きけなくしてあげるけど」