「このまますぐに王都を出ると良い。少しでものんびりしようものなら、ひどい雷雨に捕まることになるぞ」


アレフに続くつもりだったが、オルキスは足を止め目を見開いた。

確かにこれからオルキスたちは王都を出てとある人物に会いに行く予定なのである。


「次会う日を楽しみにしておるからな」


ボンダナが瞳を妖しく輝かせてにやりと笑えば、オルキスは顔をしかめて返事をする。


「邪魔したな」


外套の裾をわずかに翻しながらボンダナに背を向けると、戸を開け自分を待っていたアレフを従えて、オルキスは力強い足取りで小屋を出て行った。

家の外から聞こえてきた馬のいななきに目を細め、薄暗い部屋の中でボンダナは呟く。


「その時は、娘と共に面白い話でも聞かせておくれ」


満足そうに笑みを深めると、ひと仕事終えたとばかりに肩の力を抜き、ゆっくりと瞳を閉じたのだった。