「伊織ー!」
そのときどこからか声が聞こえた。
あたしと伊織ちゃんは、一斉に声のした方に首を向ける。
そこでは、ひとりの男の子が大きく手を振っていた。
たしか名前は工藤(クドウ)くんと言って、クラスメイトだ。
「美紗、あっち行こ」
パッと目を輝かせた伊織ちゃんは、足を速めて呼ばれたほうへ向かう。
「あ、うんっ」
あたしも慌ててついて行く。
そういえば、工藤くんと伊織ちゃんが喋っているのを何度か見かけたことがあるっけ……。
「ここ座れよ」
そこへ行くと、工藤くんが席を空けてくれた。
「いいの?」
「お前らそっち詰めろよ」