「何故、壮馬さんは逃げなかったんですか?」


「え?」


「こんな傷だらけの恭介を見たのは初めてです。一体何人と喧嘩したんですか?!」


壮馬さんを問い詰めて人数を聞いた私は呆れを越して溜息すら出ず、ただ怒りだけが浮かびました。


「何故、逃げるという選択肢がないんですか!?壮馬さんが逃げれば恭介も逃げたはずです!!」


「おい香菜、壮馬をそう責めるな」


「恭介は黙ってて下さい」


私は壮馬さんに詰め寄り、そして恭介に指をさした


「恭介と腐れ縁であり幼なじみなら恭介の性格は把握してますよね?抑えることも知ってるはずです。壮馬さんは喧嘩を好む性格ではありませんよね?それとも、喧嘩はお好きですか??」


壮馬さんが短気で血の気が激しいとは思えなかったからこそ、私は敢えて煽るように問うことにしました


壮馬さんは巻き込まれただけでないのか否か。


恭介と友達だからこそ目をつけられ喧嘩を売られることもあるかもしれませんし。


それとも、実は喧嘩が好き?


「あははっ…」


「え?」


「いや、香菜ちゃんを馬鹿にしたわけじゃないよ。恭介よりしっかりしててお姉さんに叱られた感じがしてさ。僕一人っ子だから新鮮で」


「あの、答えになってませんが…」


「ごめん。僕は喧嘩は好きじゃないし、確かに恭介を止めることも出来たかもしれないけど今更反省しても意味なんてないからさ。それに恭介と幼なじみなのは決して消えないし消せない。だから僕は受け入れるしかないんだ」


恭介を庇っている、というよりも現状に納得しているような発言に聞こえるような気がします。


壮馬さんはそれでいいのですか?


「それに例え恭介と縁を切っても一度目をつけられた奴等からは逃れられないしね。逃げても無駄なんだよ」


「ホント壮馬は性格悪いよな。さりげなくオレを貶してるだろ」


「ちょっ恭介!殴られたところをに頭突きするな」


傷だらけのくせに恭介と壮馬さんのじゃれあっている姿


笑って誤魔化しているようにも見えませんし恭介に合わせて無理をしているようにも思えない…ですから壮馬さんの心情が読めません


友達を大切にしているからでしょうか


「壮馬さんは優しいですね」


小さな声で言ったつもりでしたが恭介と壮馬さんの耳に入ったらしく


「壮馬が優しい??それはねぇわ」


「ったく酷いな恭介は。……ありがとう香菜ちゃん」


初めて会ったのに違和感なく自然と会話をすることができる人はそういません。


あ、そういえば…

私、あることに気づいてしまいました

ある意味失態です。


「あの、きちんと自己紹介していないのに馴れ馴れしく名前で呼んだり怒ったりしてすみません。恭介の義妹の椹木香菜です!!」


「あ、いいよ。僕も香菜ちゃんって勝手に呼んでたからさ。僕の名前は蒼井壮馬、よろしくね」


壮馬さんの優しい笑顔の表情は恭介とは違った温もり

何だか知りませんが急に体温が上がった気がします。


「香菜、気をつけろよ。壮馬はタチが悪いから」


「恭介は香菜ちゃんに僕の印象をどれだけ悪くしたいんだよ」


正反対だからこそ気が合う

正反対でも似てるところがある


二人の出会いは、そういう因果だったのかもしれませんね。


さてさて、傷だらけの二人を早く手当てをしなければなりませんね。