ぽたりと雫が頬に落ちる。

風に乗って伝った雨なのか、自分の涙なのがわからなかった。



「はい」

私が頷くと、森井くんが片手を広げた。


「小宮さん、おいで」

濡れることなんて気にせずに、そこに飛び込む。



青い傘一本に守られながら、森井くんの腕の中で幸せに浸る。

まるであの<遅咲きの想い>って歌みたいで、脳内でメロディが流れる。



————今なら伝えられる。



「好き」


抱きついたまま森井くんを見上げて、改めて言葉にする。

たった一言だけど、こんなにドキドキするんだ。




「……本当いつも不意打ちだよな」


何故か森井くんは顰めっ面で、怒っているのかと思ったけれど顔が少し赤い気がする。


「えっと……怒らせた?」

「怒ってない。むしろ嬉しい」


その言葉にほっと胸を撫で下ろして、微笑む。


やっと伝えられた好きって想い。


「私も嬉しい」


森井くんに恋をして、初めての気持ちをたくさん知れた。

毎日がキラキラとして見えて、私の心の中は森井くんへの好きでいっぱいになっている。


好き。森井くんが好き。

きっとどれだけ好きを伝えても、消えることはなく溢れ出てきてしまう。



「小宮さん、目閉じて」


青い傘がゆっくりと影を落とす。

そっと目を閉じると、私の唇に落ちた優しい熱。





私の、私たちの世界がまたひとつ変わりだした。










<遅咲きの初恋>完

(その後のふたり随時追加予定です)