そのまま、壁に身体を押し付けられた。

ひんやり、冷たい壁と
目の前にある天ヶ瀬くんの顔。

逃げ場はない。


「んで、アイツはももの何なの?」

「アイツって愁桃のこと…?」


「そう。なんか一緒に来てたみたいだけど」


「あ、あれは…そのいつも一緒に来てて。ただの幼なじみっていうか…別に何かあるとかじゃ……」


「んじゃ、俺も他の子と一緒に来ていいの?」


「っ、それは……やだって昨日言った」


そう、昨日キスされたあと。


わたしからひとつお願いをした。


「こういうこと、わたし以外の子としないで」と。


結局、それに対する返事は返ってこなくて。


きっと、そうやって縛られるのが好きじゃないんだと。

そもそも、わたしが一方的に天ヶ瀬くんを好きで、向こうにはわたしへの気持ちなんか何もない。


つまり、そんな風に天ヶ瀬くんを縛り付ける資格なんかない。