恵孝が町の門の外で見た日の出を、恵弾は城の中から見ていた。夜通し、負傷した兵士の治療に当たっていたのだ。
 幸か不幸か、医者が次々に城に来る。満足できる人手だった。


「休んだか」
 声を掛けられて我に返る。
「暁晏さん……ええ、まあ」

 暁晏はそっと笑った。
「不眠はいかんぞ」
「知っております、これでも医者ですから」
 暁晏こそ、前の夜もろくに休んではいまいに。

 手渡された包みが温かい。中には饅頭が入っていた。
「頂きます」
 かじりつく。餡の甘みが口に広がった。

「城の料理長とは仲が良くてな」
「なるほど、暁晏さんの好みそうな味です」
 恵弾はむかし、珍しい医学書を書き写すために、暁晏の家に何度も通っていた。そこでもよく、甘いものを出されて食べた。