形作ってしまえなくても、せめて、いつか。


何回も諦めなきゃって戒めていたら、きつく戒めなくてもいいくらい、この情熱が静かにくすぶるようになって、次第に消えて、そういえば好きだったなって懐かしく思える日が来ないかなあなんて——そんなことを考えている時点で、まだまだ難しいのだけれど。


こういう出張とかお仕事とか、何かしらの予定があって瀧川さんが来られない日は滅多にない。

それほど通ってくれている。


だから思わず、背の高いすらりとした姿を探してしまう。


優しい穏やかな微笑みを思い出す。


いくら戒めても、いくら認識し直しても、なんだか瀧川さんが朝一番に来てくれるのが当たり前みたいに思ってしまっていることに、ふいに気づかされる。


いらっしゃいませって言える幸せを失う怖さが、決まって鋭く胸を突く。


当然のことをすっかり忘れていたんだと思い知らされる。


突然なつもりの衝撃は、本当は全然突然ではなくて。当たり前で。

私はただの店員なのだと、ひどく冷えた理性が知らしめる。


ただの店員でいたい。ただの店員でいなければいけない。


ゆっくり思うのに、胸の奥で勝手に膨らむ切なさは、どうにもできなかった。


——擦りきれた戒めを、今日もしつこく思い出す。


でも。

でも。やっぱり私は。


瀧川さん。


……あなたが、すきです。