……とは思っても、高梨の笑顔に怒鳴ることもできず、俺は平静を装って相談に乗るふりをする。


「そいつ部活やってんの?」

「あっ、うん。やってるよ」

「じゃあ、部活帰りにでも渡したら? 疲れてるときに甘いもんもらったら、喜ぶんじゃね?」

「あーなるほど、そうだね! じゃあ、そうする。堺、ありがと!」

「……いいえ」


少しでも先伸ばしにしようと適当に答えたのに、高梨は頬を染めた満面の笑みで俺に感謝の気持ちを伝え、前を向いてしまった。

通学バッグから中身を出しながら、俺は高梨がクラスメートに笑顔を向けながら挨拶する光景を後ろから眺める。

……なんだよ。こんな日に失恋かよ。

ため息しか出ねぇ。いや、涙はめちゃくちゃ出そうなんだけど!

っていうか、この状況、誰からもチョコレートをもらえないことより空しいんじゃね!?

俺は机におでこをぶつけるようにして、突っ伏す。

後ろの席のダチから「サカちゃん、どした! 生きてるか?」という声とともに俺の背中をシャーペンの鋭い方で突っつく感触があるけど、構っている余裕なんかなかった。

……マジで泣きたい。