その点について、クラーラ院長も修道女達も、ディアヌの考え方は違うと言ってくれたけれど、誰にも望まれなかったという事実は否定できないだろう。

 ノエルに渡したのは、城に戻ってから父から与えられた宝石だった。首飾りが二本に髪飾りが三つ。それから耳飾りが二組に腕輪が一つ。いずれも黄金の台座にエメラルドやルビーといった宝石をあしらった豪華な品だった。

 城に戻って二年の間、公の場に出ることはほとんどなかったが、ごくまれに出る時に身に着けるよう渡されたものだ。

 父は他にも宝石を渡そうと言ってくれたが、それについては断った。自分が宝石の輝きにふさわしい人間とは思えなかったから。

「——それと、この部屋を今後も使ってかまいませんか」

「それは……陛下に聞いてみないと。一応、婚姻はするわけなので、王妃の使う部屋に移動してもらう方がいいのかもしれません」

「——でも、陛下はセヴラン王国に戻るのでしょう? でしたら、私はここに残していった方が」

「まだ、ジュール王太子が捕まっていませんからね。彼をとらえるか、彼の死が確認されるまでは——それに、この国の貴族達も陛下がいなくなったとたん反抗するだろうし」

 一応、ルディガーがディアヌを『王妃』に迎えると決まったことから、ノエルはディアヌに対する態度を改めることにしたようだ。

 冷ややかな空気をまとってはいるが、表面上は丁寧に接してくれる。

「……そう。お異母兄様は、まだ、見つかっていないものね」

 あの日、ジュールはディアヌを殺すつもりで部屋に来たのだろう。もう少し、ルディガー達の到着が遅れていたら、どうなっていたことか。