「教えろよ、尊人!」

百メートルほど進んだところで、僕は尊人に追いついた。

尊人は自転車から降りてガードレールにもたれて、苦しそうに荒い呼吸を繰り返している。

「なんで、そんなこと聞くんだよ?」

尊人は、不満そうな声で僕に聞き返した。それは、つぼみと一緒だった。

「気になるからだよ!」

僕は、はっきりとしたした口調で言った。

「別に、普通の話だよ」

尊人は、そっけなく言った。その言葉も、つぼみと一緒だった。

「じゃあ、今週の土日、どっちか僕と遊ばないか?」

「いや、土日はむりだ。悪いなぁ、願」

手をパタパタと振って、尊人は早口で答えた。

「え、お前もかよ。つぼみも、土日むりだって言ってたぞ」

僕は、怪訝そうな表情を浮かべた。

「へえ、そうなんだ。そりゃあ、しかたないなぁ」

そう言って尊人は、自転車に乗って僕から逃げるように家に帰った。

尊人の行動に僕は怪しさを感じていたが、それ以上聞くことはなかった。