あの時、女の子はチェンソーなんて持っていなかった。


「家の近くで見たってことは、近所の子か?」


「いや、近所の子供じゃない」


俺は左右に首を振る。


「そうだよな。俺はあんな子見たことがないからなぁ」


城はそう言い腕組みをした。


「もしかしたら、最近引っ越してきたばかりとか」


可能性の一つとして、俺はそう言った。


「そうかもしれないな。でも、引っ越してきたら挨拶くらい来るだろ」


城に言われ、俺は首を傾げてしまった。


確かにその通りだ。


近所に引っ越してきたなら、誰かが挨拶に来てもいい。


でも、最近そんな話は聞いていない。


結局、また振り出しか……。


俺は血のついた地面を見下ろした。


「公園に行ってみるか?」


「あぁ、そうしよう」


かくして、俺たちはこの場を後にしたのだった。