「ありがとう、壱夜くん」


「礼を言う暇あったら、危険を素早く察知して回避する能力を身につけろ」


「う、うん…」


きっと、今のは…


“どういたしまして”って言う意味なんだろうな。


壱夜くん、少し照れくさそうな顔しているし、何より、お礼を素直に受け取る人じゃないから…。


「何ニヤニヤしてんだよ」


「ううん、なんでもない」


「おかしなヤツ」


呆れたように溜め息をつく壱夜くんに、クスリと笑いが零れた。


壱夜くんが私に電話番号を教えてくれた…。


アドレスに入る初めての男の子の名前。


しかも、それが好きな男の子だなんて、とても嬉しい。


画面に表示した壱夜くんの電話番号を見ながら、鼓動が軽やかに弾んだ。


今は、緊急連絡用だけど…


ゆくゆくは、どんなことでも気軽に電話を掛けられるようになれたらいいな…。