「大丈夫か?」

「あぁ、大丈夫だ。
……あかねさん、遅くまで済まなかったね。」

「いえ、そんなこと…
どうぞ、お気を付けて。」



このところ、たまに優紀さんがうちに来るようになった。
それは別に良いのだけど、気になるのは来るのが優紀さん一人だということ。



「あの…優紀さん、もしかして、伶佳さんには言えないお悩み事でもあるのでは?」

「やはりそう思うか?」

那月さんも私と同じことを考えていたようだ。



「なんでしょう?お仕事のことでしょうか?」

「さぁ…あいつは子供の頃から、人に弱みを見せるのが嫌いだからな。
でも、きっと何か悩みがあるんだと思う。
そうじゃなきゃ、用もないのにわざわざうちに来るはずがない。
ここのところ何度も来てるしな。
多分、本人も話したいんだろうが、なかなか話せないんだろうな。」

「あの…私、今度、優紀さんが来られたら外へ出ます。
私がいなかったら、打ち明けて下さるかもしれませんから…」

「いや、あいつはなかなか話さないと思うが…」

「那月さんだけだったら、話されるかもしれませんよ。」


だいぶ馴染んできたとはいえ、やっぱり私は部外者だ。
血を分けた弟だけなら、優紀さんも腹を割って話してくれるかもしれない。
うちの近くには、カフェもコンビニもあるし、ちょっと足を伸ばせばファミレスや漫喫もあるから、時間を潰すのは簡単なことだもの。