後ろから突然話しかけられ、驚いた。
「……はい?」
「この前、駅の南口で、三島課長の車から降りるの見た」
「見間違いじゃない?」
椅子に座って缶コーヒーを開ける安藤。それからこちらを見た。
「三島部長、結婚してっけど」
あ、分かってしまった。
私は温かいお茶を持ちながらその事実に気付く。そして、そんなのはこの場を離れる言い訳には少しも貢献しないことにも。
安藤って結構口悪い。たぶん、それを気付かれないようにあんまり話さないようにしてるんだろう。
「それ、脅してる?」
皆に安藤がそれを言いふらしているところの想像はつかないけれど。