「またぜひ遊びに来ておくれよ!」

「はい、今日は本当にどうもありがとうございました!」



一時は不穏な雰囲気にもなったけど…
アイスを食べてからは、また何もなかったように、みんなで喋ったり、カードで遊んだり。
私はポーカーのルールを知らないから見てただけだけど、それなりに和やかで楽しい時間を過ごすことが出来た。
沙也加さんのご家族は、那月さんのお宅とは違い、基本的には気さくで楽しいご家族だと思った。
でも…残念ながら、私はやはりここでも好かれてはいないようだ。



沙也加さんの家を出た那月さんは、通りに出てタクシーを拾った。
あんなすぐ傍に来てるのに、実家には顔を出さないあたり、ちょっとどうかと思うけど…



車内では、何も話さなかった。
那月さんは、明らかに何も話したくないって顔をしてたから。
仮初めの夫婦とはいえ、さすがに始終一緒にいるから、そういうことは私にもわかるようになってきていた。



その理由もわかる…
それは、沙也加さんのお父さんのことだ。
沙也加をもらってほしかったというお父さんの言葉…
それが、那月さんの心に引っかかっているんだと思う。