4


「あれ? 千歳じゃん。バイト?」
 声をかけてきたのは、同級生の美雪だった。美雪の隣には彼氏と思われる人がいる。
「バイトだよ、美雪。美雪は彼氏と初詣?」
「あったりー。どう、羨ましい?」
 正直羨ましいが私は「別に……」と応えた。
「っていうか、なんで優がいるの? もしかして、付き合ってる?」
 優が「いや……」と何か言いたそうだが、そこに私がわって入った。
「新年明けまして、私達付き合うことになりました」
 優が目を大きく開き、驚いている。
 美雪も「えっ! マジで!?」と、驚いている。
「マジで」
「ウソー。優だよ、あの優だよ。優のどこがいいのよ」
「ぜ、ん、ぶ」
「えー。信じらんない」
 美雪は疑っていた。しかし、最終的には「じゃあ頑張ってね、おふたりさん」と、そう言ってくれた。
 美雪が帰ったあと優が私に「本当に僕でいいの?」と訊いた。
「これも神様の巡り会わせじゃない? だからそんなに気にしない!」
「は、はあ」
「何? 私じゃ不満だって言うの?」
「い、いや、そんなことない!」
「じゃ、これからよろしくね。優」
「よろしくお願いします。千歳さん」
「千歳でいいよ。彼氏なんだし」
「じゃ、千歳……。千歳がバイト終わるまで待ってるよ」
「そお? じゃ、よろしくね」
 私は掃除が終わったことを先輩に報告すると「話し込んでたわね。何かあった?」と、心配された。
「いえ、別に……」
「そう……。まあ、その分給料から差し引くからね」
「えー! 先輩、見逃して下さいよー」
「いーや、彼氏とイチャイチャする奴は見逃せないなあ」
「そ、そんなあ」
「次は、備品の整理をお願い」
「わ、わかりました」
 夕暮れ時、ようやくバイトが終わった私は、急いで彼の元に向かう。彼は笑顔で「千歳、遅いよ」と、言う。私は「彼氏は彼女を待つものなんだよ」と、わけのわからない言い訳をする。
 夕陽が沈みかけて、地平線を明確にする。私はその地平線の果てを想像しながら、歩く。


~おわり~