駅近くにある、よく仕事終わりに行っていたカフェに彼氏に突然呼び出されて、久しぶりに会える嬉しさと改まってわざわざ呼び出すほど何か大事な話でもするのかなという不安にドキドキしながら、向かう。


カフェのドアを開けると、馴染みのコーヒーの香りと、フレンチポップスの曲が静かに流れていた。


入ってすぐに、窓辺の席に座っている彼氏の姿を見つけた私は、頬を緩ませながら近付く。



「やっくん、お疲れ様。それで、話って、何?」


マフラーとキャメルのダッフルを脱いで、椅子の背もたれに掛けて、座る。


三年交際した彼氏、高木 靖志 とは、歳が同じで誕生日も近くて、趣味も食の好みも合って、とにかく共通点が多い、相性の良い彼氏。


それから、ちょっと有名な会社に勤めていて
やり手の営業マンらしくて、彼女である私も少しだけ鼻が高くなる。


それから、それから、とにかくイケメン。

はっきりとした二重の瞳に、鼻筋が真っ直ぐ通った鼻梁、薄すぎず厚すぎない、ぽってりとした唇に、スタイリッシュな骨格。


軟弱と呼ばれたくなくて学生から始めた趣味のサーフィンで焼けた小麦色の肌と鍛えられた体躯は男の魅力満載で、抱かれたくなる。


何故、彼が私を選んだのか、眼鏡をかけて長年地味子と呼ばれた私の彼氏になって、プロポーズをしてくれたのか分からないほど、私の彼氏は、雲の上的存在プラス高嶺と花的存在。


そんな彼氏を、やすしだから、やっくんっていつも呼んでいるのだけれど、本人はあまり嬉しそうじゃない。