そして、殿下は父上を呆れたように振り向く。

「団長に伝えたのは兄上ですか?」

「何のことですかな?」

どこか怖い笑顔の父上とウォル殿下に、キスされたおでこを隠しながら真っ赤になった私。

「娘は屋敷に連れ帰りますぞ、殿下!」

「団長……そのうち馬に蹴られてください」

ムスッとした彼に、父上は目を丸くした。

「騎士たるもの、馬も御せないはずがないではありませんか」

……いや。違うよ父上。

ツッコミを入れるべきか真剣に悩んでも、どうしたらいいかなんてわからないけど。

ウォル殿下に手を差し伸べられて、その手をとって立ち上がる。

「ありがとうございます」

「……明日も来てくださいますか?」

首を傾げる殿下に、同じように首を傾げる。

「父上に、きちんとお昼ご飯持たせるつもりでいますわ」

「ああ。では、私が迎えに行けばいいですかね?」

「……殿下がほいほい王城を抜け出さないでください。警護する親衛隊が大変です。しっかり昼食を忘れていきますから、妙な気は起こされませんよう」

最後に、父上が奇妙な約束をして、その場は解散になった。

私、きちんとお返事していないけど、いいのかな?