外の空気を吸い込むと、鼻の奥がツンとした。


すっかり日が落ちた、真っ黒な校庭。


白い吐息だけがぼんやりと浮かんでは、闇に消えて。


校舎を見上げると、まるで世界に自分だけ取り残されたような、そんな感覚になる。



今は、誰も自分を見ている人はいない。

そう思うと気が楽だった。




……一人になりたい。

最近考えるのは、そんなことばかり。



──今日は、女子たちの誘いをテキトウな言葉で断って、図書室の奥にあるソファで本を読みながら放課後を過ごした。



小説は現実から逃げるための1つの道だと思っていたのに、内容なんて全く頭に入ってこなかった。



下校時間を過ぎて外に締め出されても、こうして学校の敷地内にとどまったま、帰れずにいる。