今、柊くん…私の名前呼んだ?!


こっち見てる?!


今まで起きたことのない出来事に私の頭は一気に真っ白になる。


そして、クラスメイトのみんなが一斉に私に注目した。


こんなこと生まれて初めてでどうしていいかわからない。


私はキョロキョロと目だけ動かしてから、また柊くんを見た。


やっぱり私のこと見てるよ…。


「緒方さんっ、ちょっといい?」


柊くんが手招きしながらもう一度私の名前を呼んだ。


あぁ、どうしよう。やっぱり私のことだ。


『来て』


って言っているのかな。


緊張で手足がぎごちなく動く。

どうしよう…今の私、きっとすごく変だ。


教室の真ん中の席。


この教室になって、自分の席以外には近づいたことがない。初めて入る領域。


柊くんを取り囲むグループは男女みんながキラキラしていて、空気が違う。


そんな空間に私が入ってもいいのだろうか。


みんなの視線が怖くて下を見ながら、柊くんの席へと近づいた。


手には汗をかいていて、身体中が熱い。