巷では生粋の不良として通っている佐伯
奴に喧嘩をふっかけるやつは何人もいるが、2度目を挑む奴はいない、らしい。

噂に疎い俺ですら知ってる奴だ
つまり、かなり有名なんだろう。

奴に話しかけられた時には、正直言えば怖いというよりもめんどくせーっていう気持ちが強かった。


だってしょうがねぇだろ?

さっきからトラブル続きでこっちは疲れてんだっての。

だが瀬奈はそうは思わなかったようで俺の後ろでびくっとしたのが分かった。
まぁそれが普通の反応だな。だが生憎今の俺の感覚は麻痺してんだよ。

「おいおい、もしかしてびびっちまったのかよ。だせぇーな、流石のクールイケメンの八神クンも台無しだな。」
「は?」 「ぶっ!」

おい。そこのチビ。何笑ってやがる。

つーかなんだ今のその呼び方。初耳なんだが


というかその前にいつまで笑ってんだこいつは。庇ってやんねーぞこら。

そういう思いを込めて睨みつけるも全く気づかず笑い続けている彼女。
そこで拳を握り、頭にそれを落としてやる。

気分がスッキリした後、何事も無かったように佐伯を見返す。

下から強い視線を感じるが自業自得だろ。

ふーん。
やっぱ不良っていうだけあってなかなかの体してんな。いつも鍛えてんのかそれとも喧嘩の賜物か…いや、確実に後者か。

「あらら、なかなか後ろの彼女、可愛いじゃん。どこで楽しんでたんだよ。」


いやまず彼女ねーし。
そんな平和な感じじゃ全くなかったっつーの

心の中で反論するも口には出さない。

てゆーか反論するのもめんどくせー。もうだるくなってテキトーに

「羨ましいかよ。お前みたいな奴、女の方から願い下げだろーな。」
「なっ……!」


わざと煽ってやれば後ろから不安そうに俺の制服を掴んでくる瀬奈。

その手を後ろ手でそっと撫でてやる。

その事はまぁともかく彼女からの視線が痛い
しょうがねぇか、俺がこいつとの関係を何も否定しなかったんだし。

不思議か。あぁ、俺も不思議だ。
悪いな、めんどくさかったんだよ。

「もう話は充分だろ。いい加減にしてくれ。」

だるいという雰囲気を全開にしながら言うも生憎こいつには全然効かなかったようで。

それどころか悪役も顔負けのにたっとした笑みを見せられた。

……いや、野郎にそんな笑顔を見せられても困るどころか気持ちわりぃーんだけど。

思わず軽く鳥肌が立つ。

「クールで何事にも無関心だって有名の八神クンがそこまでそいつの事庇うなんてな。なんか余計に興味湧いてきたなぁ。」

いやなんでだよ。つか初めて聞いたわその噂どこの少女漫画だよ。

思わず遠い目になる。
めんどくせー事ばっか起こりやがる。