「じゃああなたは、その話せる魔獣をこの森に探しに来たということですね」

「そういうこった、少年。なんてったって、この森の中ではぐれちまったからな。もしかしたらまた、森で出会えるんじゃないかって思ってな」

「その魔獣のこと、大切に思っていたんですね」



ルキがそう言ってレックスさんに笑いかけると、レックスさんは「それは違うな、アイツは役に立つ道具だから」と冷たく言い放った。

「じゃあな」と言い残し森に向かって真っ直ぐに歩いていくレックスさん。

「道具なんて言い方はちょっとヒドイんじゃあ」と思ったけれど、それを指摘をするかしないか考えているうちにレックスさんの姿が視界から消えてしまった。



「俺たちも帰ろう」と言って歩きはじめたルキのあとを追いかけた。



「ルキっ‼今日聞いたことはふたりの内緒にしようよ。レックスさん、話せる魔獣のことを雑誌にも紹介してないって言ってたし、世間にはまだ隠しておきたいことなのかもしれないから…」

「そうだね、わかったよメイベル。俺もこの話しは広めない方がいいと思う。じゃあまた明日、学校でね」



男子寮の前までつくと、そこからルキと別れた。

ようやく私の肩に乗ってくれたピーちゃんと一緒に、1階のトイレの小窓をよじ登り中にはいった。



ひとすじの明かりすらもない廊下を歩きながら、ランタンを片手に思うことはやっぱりさっき聞いた話せる魔獣の話。



まさかこの広い世界に、話せる魔獣がいるなんてきっと誰も想像できない。

この事実を世間に公表すれば、間違いなく世界中の民が驚くだろうな。



連日『話せる魔獣が存在した』というニュースで持ちきりになるはず。

それくらい、レックスさんから聞いた話しは衝撃的なことなんだ。