あれ?
右端を歩く男性の足どりがおかしい。
ふらついている。酔いが回ったにしては、急にふらつき始めて右側に寄っていっている。頭痛もするのかこめかみを押さえている。

あ、危ない。
ガラガラガッシャーン!

男性はそのまま歩道の脇のゴミ捨て場に倒れ込んでいった。

「やだー、阿部さんったら、酔いすぎ」
「飲みすぎですよ。そこ汚いから早く立ち上がって」
女性が声をあげる。

「おい、真人、何してるんだよ」
男性たちも笑っていて誰も彼に近づいたり手を貸そうとしたりしない。

私は思わず駆け寄った。

「大丈夫ですか?」
ゴミ袋の山に倒れ込んだ男性に声をかける。

仰向けになり眉間にしわを寄せて苦悶の表情を浮かべている。私の問いかけに唸るだけで返事をしない。

かがみ込んで男性の肩に触れてもう一度声をかける。
「大丈夫ですか?目を開けられますか?名前が言えますか?」

男性は目を開けず「うーうー」と唸っている。
そのうちに喉仏が上下するのが見えた。
まずい、嘔吐する。

「真上を向いてちゃダメ」
咄嗟に男性の身体を自分の方に引き寄せて横を向かせた途端にもどした。

自分の方に引き寄せたのはその方が力がかけやすかったのと生ごみの入ったごみ袋に男性の顔を押し付けたくなかったから。

きゃー

女性達が騒いでいるけれど無視して、男性の様子を確認する。
嘔吐はおさまったけれど、相変わらず苦しそうに右手は頭を押さえている。
左手は…動かしていない。左腕を軽く持ち上げて手を離すとボトンとと脱力したまま落ちていった。