ケータイ小説 野いちご

最低な元カレ専務の10年愛

次の日。

同期の須田このみと待ち合わせをして、総務部秘書課へ行った。

このみはとっても美人さんで、受付嬢をしているけど、朝は挨拶と準備のため秘書課に寄っている。

女の園にひとりで行く勇気がなくて一緒に連れてきてもらったのだ。

今までの私の所属と同じ総務部ではあるけど、秘書課は特殊なところ。

役員室が立ち並ぶ12階にある。

ただ、役員の部屋の中に秘書室が設けてあるから、普段ここにいるのはピンチヒッターや、役員の専任秘書ではなく秘書課全体の事務をこなす人だけらしい。

「今日付けでこちらに異動になりました、井川紗知と申します。
よろしくお願いします」

「…よろしくお願いしまーす」

丁寧に礼をしたけど礼を返してくれる様子もなく、なぜかみんな素っ気ない。

オフィスチェアにふんぞり返ってマニキュアをいじっている人までいる。

こわっ!何この雰囲気。

「専務は今会議中ですので、直接部屋で待つようとのことです。
これが仕事内容やタブレットの使い方を簡単にまとめた書類になります。
専務が来られるまで、それを読んでいてくださいね」

一番年上とみられる女性…長部さんから書類を受け取り、礼をして部屋を出た。

受付へ向かうこのみも一緒のタイミングで部屋を出てきた。


「いっつもみんなあんな感じなの?雰囲気悪いね」

「違うよ。紗知が専務直々の指名で秘書になったからだよ」

このみは、ふふっと笑った。

「専務、モテるからね」

そう言いつつも、取引先に彼氏がいるこのみには興味もなさそうだ。

受付嬢は取引先の人に声をかけられて付き合うケースが多い。

そのまま寿退社、なんてザラにある。

合コンなんかより効率的!と奈津美がとても羨ましがっていたっけ。

…にしても…そうか。

やっぱり大人になっても翼はモテるのか。

確かに、多少歳を取ったって、顔立ちが整っていることに変わりはない。

「何か気に入られるようなことしたの?
広報課とは接点なさそうだけど…」

「…何にもしてないよ。
くじ引きでもして当たったんじゃない?」

乾いた笑みで返す。

いくら同期のこのみにも、事情を説明しようがない。

私にだってまだよくわかってないんだから。


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