その日は残業なしで、なおくんは早めに帰ってきてくれた。


夜ご飯はチンジャオロース。


ご飯と一緒にがつがつと食べている彼をぼーっと眺めていた。



「よねこ?」


「えっ?」


「どうした?」


「ううん、たくさん食べてくれて嬉しいなーって。おかわりは?」


「うん。お願い」



なおくんは空になったお茶碗をテーブルに置いた。



いろいろあるけれど、やっぱり作った料理をおいしそうに食べてくれるのは嬉しい。


心を弾ませながら、お茶碗を片手に炊飯器のもとへ向かった。



底にくっついたお米をしゃもじでかき出していると、


「よねこ」


と、いつもより優しいトーンの声が、後ろからかけられた。



「ん?」



振り向かないまま、わたしは返事をした。



「ごめん。よねこの誕生日、休めなくなった」



――カツン。



思わず、しゃもじを床に落としてしまった。