「名前はダン。リュートさんの知り合いなんだ。2人に何があったかまでは知らないけど、いつもリュートさんと店に嫌がらせをするんだ」

ーするとシオンが「あれを嫌がらせと言っていいのか？」と口を挟む。

「確実に営業妨害だろう」

シオンの言葉にアーディは悔しそうに拳を握った。

「それって、どういうこと？」

「この前、あの人が酔ったふりをして他の客を挑発してね、大喧嘩になって食器や椅子が壊れて、店内がめちゃくちゃになったんだよ」

そのせいで店は改装せざるを得なくなったのだとアーディは悔しそうに言った。

「めちゃくちゃになった店内に呆然としたリュートさんを見て、ダンは笑ったんだ。…ざまあ見ろって」

リルはアーディの拳が固く握られていることに気づいた。

それはそうだと思った。悔しいに違いない。きっとアーディはリュートを尊敬していて、そのリュートが侮辱されたんだ。起こらないわけがない。


「でも、そんな人がどうして花束なんて持ってここに…」


するとダンは「やあ、リュート」と親しげに話しかけた。

リュートさんは他の人と話していたが、その声で誰か分かったようで固い顔をして男性を睨みつける。


「ダン、お前、どうしてここに」


二人の間に緊迫した重たい空気が流れる。一触即発とも思える空気だが、それを一切感じていないのか、ダンはにこやかな笑みを浮かべて言った。


「何って、改装祝いだよ」