鈴原くんは急に真剣な顔になったかと
思うと


「七瀬、
お前はこの前、昔のことは忘れたいっていったけど、俺はお前を傷つけたこと、
ずっと後悔してきた。
だから、これからは絶対、お前のこと、
傷つけないから。」


ゆっくり、まるで誰かに言い聞かせるように鈴原くんはわたしの涙に濡れた目をみつめていった。
わたしは…



「………わたし、ずっと、男の人が怖いの。
いじめられなくなってもだめで。
だからわたし、鈴原くんが同じ高校で隣の席で、ただ、怖かった……。」

震える膝に力を入れて、
鈴原くんの目を見つめ返して
気持ちを伝えようとする。

「でも、今、怖いだけじゃないのかもって思ってきてる。
すぐに怖くなくなるわけじゃない……けど、
ちゃんと、向き合いたい……。」


なんとか、正直な気持ちを言葉に。
わたしは、
鈴原くんのまっすぐな心に触れて
自分もまっすぐを返したいと、
思った。


もう目を見てられなくて、
また床をじっとみて動かないでいると、


「……ありがと。
俺、七瀬と友達になりたい。」


「……へ?」


びっくりして顔を上げると、
照れたように笑う、鈴原くんと目があった。


怖い、のとはまた別の、
心臓のドキドキを感じて

わたしは戸惑いながらも、

「……わ、たしも」

と答えた。