あれからまだ瀬奈は暫く泣き続けていたがそれも終わり、少し赤くなった目元を軽く親指でなぞる。

「ありがとね…。なんか私、琉生に慰められてばっかだ。」
「んなこと気にしてんのかよ。別に俺もお前に支えられてる事もあんだよ。気にすんな」


言ってるうちに気恥ずかしくなり照れ隠しに瀬奈の頭をぐしゃぐしゃと撫で回す。

「よし、じゃあHR始まっちまうし行くか。」
「うん。でも先生帰ってきてないけど勝手に行ってもいいのかな?」


あー、それは盲点だったな。
いや別にいいのか?HRに遅れちまったら元も子もねーしっ……。

ふと腕時計を見れば思わず思考を止め固まった。

「?」


そんな俺の様子が気になったのか、瀬奈が頭に、ハテナマークを浮かべ俺の視線にある腕時計を覗き込んでくる。

「!?」 「……」


そして俺と同様に固まる。

HRが始まる、2分前。

……もうこれはどう頑張っても間に合わねーよな、
だったら

俺の頭の中に黒い考えが浮かび、ニヤッと笑って瀬奈を見る。

すると、俺の顔を見て察したのか向こうからも笑いが返ってくる。
でも少し気が引けるのか眉を下げている瀬奈に対してめんどくさいのが省けて俺は嬉しいくらいなんだが。

「もう諦めていっそ盛大に遅れていくか。」

ニヤニヤと笑いながら言った俺の言葉にやっぱりか、という顔をしながら瀬奈も諦めたように笑って頷いた。