「ベニヤ板2枚あれば十分じゃね?」


「宣伝で校舎まわる時、手持ちの看板ある方がいいよね」


「絵の具と模造紙、あとは……」


「それよりさーあいつミスコンでるらしいよ」「マジ? やばいねそれ!」



放課後、設営係メンバーで机を合わせてミーティング開始。


雑談がまざったせいで話はまとまらず時間だけが過ぎていく。



あはは~と笑いながらも、チラッと黒板上の時計を見る。


やばい、もうすぐ17時だ。



「ごめん。わたしそろそろ帰んなきゃ!」



みんなに手を合わせると、ニヤニヤした顔がたくさん向けられた。



「お、帰るのか人妻!」「早く旦那のもとへ帰れヨメ!」


「ちょっ、その言い方まだ早いから!」



よねこという名前から、昔っから『よねちゃん』とか、なぜか『米!』と呼ばれることが多かったけど。


今は『人妻』だの『ヨメ!』だのと呼ばれることが増えた。



「いいなぁ、あたしも昔は将来の夢=お嫁さんって文集に書いてたよ」


「ヨメはもう叶ってるもんねー。よっ、新婚!」


「やめてよ~まだ婚約中だってば~!」


「でも同棲とかマジずるいし~」



キャッキャッとみんなに声をかけられながら、わたしはカバンを手にして教室を出た。



こういう冷やかしにはすっかり慣れた。


ミシマだけは興味がなさそうに携帯をいじっていたけど。