「今日もお仕事、お疲れさま」
「んー疲れたけど、よねこのおかげで回復した」
低めの声とともに、ぐ~とお腹の音が体を伝ってきた。
でも、なおくんはわたしを抱きしめたまま。
わたしも彼の背中に手を回して、気持ちを腕の力に込めた。
「本当? ねーお腹すいたでしょ。ご飯すぐ準備するね」
「いい匂いする。から揚げ?」
「そうだよ。なおくんの好きなニンニク醤油だよ」
そう伝えると、なおくんは腕をほどき、わたしの顔を見つめた。
おでこが出るように整えられた髪型。
きりっとした眉毛に、涙袋つきの二重の目。
Yシャツの襟から伸びる首筋。
「……にんにくの味になっちゃうから。今のうちいっぱいしとく」
低いけど、怖くはない、わたしの心を揺らす囁き声。
高校生だった去年より、一気に大人っぽくなった。
もちろんそれはそれで良かったけど、今のなおくんにはもっとドキドキしてしまう。
「ん……ご飯、冷めちゃうよ」
何度か唇を重ねられると、わたしからも求めたくなってくる。
なおくんが好き。この想いに全身が浸食されていく。
最後に、ちゅっ、とほっぺたにキスをしてから、なおくんは再びわたしを抱きしめた。
「やばい。すげー幸せ」
「うん」
「よねこ、好きだよ」
「わたしも、なおくん大好き」
早まる鼓動となおくんの温もりによって体が熱くなる。
と同時に、ぐ~とわたしのお腹の音も鳴ってしまった。
二人で顔を見合わせて笑ってから、部屋の中へと向かった。